[#SmartGrid #スマートグリッド] 北米各州でのスマートグリッドプロジェクトの問題点の整理


電力事業者が新しい装置や機器を導入した際のコストを回収する為に、電力料金の値上げを行使するのはスマートグリッドに始まった事ではなく、昔から行っている手法である。  しかし、昨今のスマートメータの導入に伴う値上げには大いに問題がある、と各州で議題として取りあげられ、Ohio州やTexas州などのように、この慣習に規制をかける動きがでている。

Smart Grid Today誌の調査によると、Maryland州、Hawaii州、Michigan州、Indiana州、Colorado州、さらにVirginia州において、既にスマートグリッド導入による電気料金の値上げを禁止する条例の制定が行われている、との事。

多くのスマートメータ導入プロジェクトは、メータだけの導入に留まっている、という事が問題の原因である、と指摘されている。メータだけの導入では、その持っている性能を具体的なユーザメリットに活かす事が出来ない、という事である。 スマートメータを導入した各州は、「電力事業者がグリッドの信頼性向上」、「停電回数の削減」、「ソーラーパネルの導入に支援」等をメリットとして打ち出しているが、いづれもインフラの改善に関する内容で、ユーザの負担する電力料金値上げの妥当性を説明できる内容とは思えない。

AMI等、スマートメータを活用できるネットワークインフラの等、今後も積極的な導入が必要なシステムへの投資は、政府からの助成金や融資に期待するのではなく、民間の投資家からの支援に期待する事が重要である、という意見が多く登場している。 民間ではグリーンテクノロジーに積極投資する会社は多く、電力会社はその安定的な操業状態から、非常に信用力の高い投資になる、というメリットもある。 特に、セキュリティやプライバシーの保護に関するIT技術の導入はエネルギー省からも要求されており、専門家を含めた導入が必要になってくる。


下記に各州で行われている、スマートメータ導入に関する様々な問題点の整理を行う。各州において、PSC(Public Service Commission)、またはPUC(Public Utilities Commission)と呼ばれる州内組織が大きな役割を担っている。この組織は、州内のユーティリティ企業(民間、公共を問わず)の料金体系を監視する組織で、例えばスマートグリッドに関する予算状況、それに伴う市民に対する料金設定について、詳細に評価を行う機関である。各州で起きている問題は、主にPUC・PSCが指摘する形で露見し、料金値上げ等の申請にストップをかける、といった内容の動きが多い。

Colorado州、Boulder市

同市のスマートグリッドプロジェクトは、北米でも最も注目されていたものの一つであったが、電力事業者であるXcel Energy社の予算の大幅な超過が起因して、プロジェクト中断の恐れがでてきている程である。当初、$1530万ドルの予算でプロジェクトが完了する予定だったのが、現時点では既に$4210万ドルまでに膨れ上がり、最終的には一億ドルに達するのでは、という予測もある。 

Xcel Energy社 によると、予算超過の最大要因は、プロジェクトのパートナー企業の一つである、Current Group社に委託していた、通信インフラとして使用されるファイバーネットワークの工事にかかるコストであった、との事。

もう一点、大きな問題として指摘されているのは、プロジェクト自体が、州政府に対して、“Certificate of Public Convenience and Necessity,”と呼ばれる申請を行っていなかった、と指摘されているのは。 この申請を行う事によって本プロジェクトのコストが予算超過した際の補填を保障し、プロジェクトに対する投資の上限を設定できる内容のものである。この申請をしていなかった為に、Xcel Energy社は、コスト回収の為の電力料金の値上げを申請しており、州政府は$1100万ドルの値上げを承認している。

現時点において、Boulder市の住民でスマートメータが導入されている家庭は、全体の43%程度でほとんど本来の機能を発揮する用途に使われていない、との事。


Indiana州

現在、Duke Energy社は、当初のプロジェクトから大幅に縮小した計画書を改めて州政府に対して申請している段階。

当初の計画では、$4.5億ドルの予算で州全体に対するスマートグリッド導入の計画を立てていたが、州予算を承認する組織である、Indiana Utility Regulatory Commissionがこの計画を、「住民に対するメリットが見えない。」という理由で却下している。

修正に伴い、より小さなプロジェクトの申請が行われる事になった。今回は、予算$2200万ドルに下方修正され、スマートメータの台数も、80万台から、4万台に減らした。この縮小されたプロジェクトの結果をみて、その後州全体に適用するかどうかの判断を行う事である。


Michigan州

Michigan州の電力会社であるConsumers Energy社が当初予定だった、今後も5年間の$9億ドルのスマートグリッド予算を大幅に縮小し、$500億ドルに変更する事を発表している。

親会社であるCMS Energy社がスマートメータの導入コストの回収の為の電力料金値上げをMichigan州に申請しているが、同州のPSCから激しい規制を受けており、Elster社とのスマートメータの実証試験や、General Electric社とのWIMAXベースのAMI導入コストプロジェクト等も実施が危ぶまれている状況である。


California州

かれこれ一年以上も議論されてきた、Pacific Gas & Electric(PG&E)社のスマートグリッドの実証試験が民事訴訟までにエスカレートした問題は、PG&E社のカスタマーサービスの不備に大きな問題があり、スマートメータ自体は正常に機能している、という結論が下された。

事の発端は、Bakersfield市に導入されたスマートメータ。導入とともに同市内の家庭で電力料金が高騰した、という報告が多発し、PG&Eに対する訴訟にまで発展する、という自体になった。この状況を受け、PG&Eが電力を供給し、スマートメータを導入した他の地域、San Francisco、Marin County等でも同様な動きが発生し始めてきた。

事件の調査の依頼を受けた第3者機関である、Structure Group社のStacey Wood氏によると、調査の結果、導入された1378台、全てのスマートメータにおいて、不具合は見出されす、正確な電力消費情報を記録している、と報告している。

つまり、電力料金の高騰は、他に要因がある、という事である。

要員の一つとして挙げているのは、この夏の異常な暑さにある、と報告している。さらにもう一つの要因としているのは、過去のメータの内約5%は、正常に機能しておらず、実は本来より少ない電力消費を記録していた、としている。  

もう一つは、極わずかに新規電気料金の徴収にて誤りがあった事、さらに低所得者に対する割引システムにも誤りがあった事も指摘している。しかしStructure Groupが指摘しているのはその間違いではなく、顧客からのクレームを迅速に、そして正しく処理できなかった顧客サポート体制にある、という問題である。顧客に対する、スマートメータに関する紹介、そして導入によって何が変わるのか、という事を殆ど行っていなかった上に、顧客サポート態勢にも教育が行き届いていなかったのが現状のようである。

同じカリフォルニア州において、San Diego Gas & Electric社やSouthern California Edison社が同様なタイミングでスマートメータを導入しているが、こちらのプロジェクトは殆ど問題が発生していない、という事もあり、PG&E社の問題が大きく注目される結果に至っている。

今後衆議会は、Bakersfield市の民事訴訟をどのように扱うのか、さらに今後ほかの地域に導入が予定されているスマートメータを継続させるのかどうか、継続的に審議する事になっている。また、カリフォルニア州のこの一連の経緯は、同様な問題が発生しているてテキサス州等においても大きな関心の的になっており、カリフォルニア州だけに閉じる話ではなさそうである。

もう一つは、懸念としてあげられているのは、スマートメータが発生する強い磁場による健康被害の懸念である。Fairfax市などは、このような健康被害を懸念してスマートメータの実装計画を却下している、という状況である。


Hawaii州

他州に引き続き、Hawaii州のPUCもスマートメータの導入プロジェクトを差止めた、という情報が明らかになっている。Hawaii州の電力会社である、Hawaiian Electric Co.社が$1.15億ドルの予算を投じてスマートグリッドプロジェクトを計画していたが、コンシューマの電気料金の値上げに直結しないスマートメータ導入プランの提出をPUCに要求されている。

ここにおいても、コンシューマに対するスマートグリッドのメリットが明確に説明されているい、という事が問題視されている。


Maryland州、Baltimore市

Baltimore Gas & Electric社は、Mariland州のPSCに対して既に数回のスマートグリッド導入計画書の再提出を要求されている。 ここでも問題になっているのは、スマートメータの導入計画のコスト回収にコンシューマに対する料金をの段階的な値上げを計画している、という点である。

もう一つはBaltimore市が注目される要因がある。BG&Eはエネルギー省からのスマートグリッド導入助成金の満額である、$2億ドルを受け取っているため、プロジェクトの規模が他の州と比較して大きい、という点である。  もし、PCSに対する申請が却下される事にでもなれば、この$2億ドルの大金を政府に対して返却する必要がある。  

最近の動きでは、BG&Eの最新の申請書がPCSに受領され、スマートメータの導入プロジェクトがスタートできるところまできているが、電力料金の値上げについては、プロジェクトコストの総額、$8.35億ドルの25%以内、という制限がつけられている。

PSCの主張は、スマートメータの導入自体がコンシューマの節電に直結する、という説明がなされていない、という事である。実質的には、スマートメータを統合するエネルギー管理システムの導入も必要である、と指摘しており、その導入、実装も含めたBG&Eの計画案提出を要求している様である。

BG&Eの主張によると、このプロジェクトでコンシューマは$250億ドルの電力料金節約が実現できる、と述べているが、具体的にどのようなスケジュールや手法でそれが実現されるのか、あまり説明されていない事も指摘されている。


Texas州

Dallas市を中心としてOncor社が実施したスマートメータ導入プロジェクトは、カリフォルニア州PG&E社と同様に、民事訴訟に発展している。嫌疑は導入されたスマートメータが正常に作動せず、不当に高額な電力料金の請求につながっている、という内容。

訴訟内容は、その内容がかなり赤裸々である事もあって、全文がインターネット上に掲載され、物議を醸していた。下記がその文面の一部である。

While there may be certain potential benefits to the Smart Meters, ONCOR is not advertising that customers with smart meters will ultimately be charged different rates depending on when energy is consumed.

スマートメータにはそれなりのメリットがあるだろう、という書き出しに続き、Oncor社がコンシューマに対して電力料金の変更について教育をちゃんと行っていない事が問題である、と指摘している。

スマートメータを導入すれば即座に電気料金を自動的に節約できるのではなく、コンシューマが電気の使い方を変える、という努力も必要であり、それを正しくコンシューマに伝える事が重要である、という指摘である。

Baltimore市の状況を見ていると、スマートグリッド導入によって関する問題は、決して技術的な問題ではなく、マーケティング、教育の問題である、という事がよくわかる。  


Virginia州

同州の電力会社、Dominion Virginia Power社は、$6億ドルの予算を投じて、240万台のスマートメータの導入を計画している。 この大掛かりな導入計画の前に、現在既に55,000台のスマートメータの導入テストを州内2箇所で行っている。

州内のState Corporation Commission(SCC)は、この導入テストにおいて、12のDemand Responseプログラムを導入し、そのコストの回収を料金引き上げで回収しよう、という提案に対して反対の意見を述べている。 今後の議論が注目される。

SCCの意見によると、納税者に提供される価値に対して、要求されるコストの増大が大きすぎる、と指摘してる。これに対して、Dominion社は、スマートメータ導入によるコンシューマに対して負担は順次下げて行きたい、という方針を述べている。

まとめ

各州の電力料金は、州内の管理組織によって常に監視され、妥当な範囲に収まるように法律状況を、うまく組織が動いている。今回のスマートメータ導入による各州の問題は、コンシューマに対して導入のメリットが説明されないまま、料金値上げに踏み切ろうとする電力会社の姿勢を問われている、という点で共通している。そもそもスマートグリッドの導入プロジェクトの多くは政府、エネルギー省からの助成金がきっかけになっているケースが多いが、この助成金と同等の金額を電力会社が自己負担する、という条件が伴っている事はあまり論じられていない。電力会社が負担する必要のある半分の予算の捻出方法は、殆どの電力会社は料金の値上げに依存している、という状況が露見した形になっている。

最終的にはコンシューマが電力消費を上手に節約し、電力料金が値上げになっても最終的には電力事業者に支払う電機料金が削減出来ればいいのだが、現時点においては電力料金が値上げの動きだけが先行し、コンシューマに対する教育、アドバイスの提供、等のサービスに殆ど手が回っていない、という状況の各州の状況の様である。

スマートメータ導入に関しては必ずしも失敗ばかりではない、という事も言明する必要がある。例えば、Florida州、カナダOntario州、等、スマートメータの導入にある一定の成功を見ているケースもあり、こちらのケースについても調査し、分析を行うことが有効である、と感じる。ただ、成功事例は、あまりニュースとして登場してこない、というのが大変残念な話である。

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